認定看護管理者教育における活用
PDPやマネジメントコンパスのメソッドは、認定看護管理者教育課程でも採用されています。ここでは、ファースト〜サードの各課程における活用や実践の形をご紹介致します。
全体的な考え方
認定看護管理者教育課程では、ファーストレベルが主に部署のサブマネジャー(主任・副師長)に求められる職能を、セカンドレベルが主に部署のマネジャー(師長)に求められる職能を、そしてサードレベルが看護部全体の運営に関わるトップマネジャー(部長・副部長)に求められる職能を身につけることが意識されています。これに対応する形で、私たちはMC/PDPのメソッドを各レベルと以下のように結びつけて学ぶことを推奨しています。
ファーストレベル:PDPを用いた問題解決
セカンドレベル:MCチャートを用いた部署課題の可視化、目標達成に向けたロードマップの策定
サードレベル:課題の明確化・分析のファシリテーション
内容と構成例
ファーストレベル統合演習
ねらい
ファーストレベルのカリキュラム基準では、到達目標として「組織的看護サービス提供上の諸問題を客観的に分析できる」との記載があり、統合演習の内容として「学習内容を踏まえ、受講者が取り組む課題を明確にし、対応策を立案する」と記載されています。これらの学習方策として、PDPを用いた統合演習では、「組織・チームの困りごと」を他者の力を借りながら整理して課題を絞り込み、自分たちの手に負える小さな問題に分析して、実現可能な解決策(行動計画)を立案する、という一連の流れを経験できるようなプログラムを実践しています。
基本的な流れ
統合演習の15時間を概ね以下のように配分します。実施主体によっては、3〜5時間程度の学習時間を追加しています。
1日目(概ね5〜6時間:講義)
看護マネジメントと問題解決
レジリエンスを高める考え方
PDPのメソッド
PDPのデモンストレーション
2日目(概ね6〜10時間:演習)
原則として4人のグループで、PDPのグループワークを行います
各メンバーの困りごとを、それぞれ80〜90分使って相互に支援しながら、分析し、計画を立案します
3日目(概ね4時間:発表)
12~20名の中規模グループを作り、問題解決の過程(実践を行っていれば結果と振り返りまで)を発表します
様々な困りごとやその解決策・振り返りに触れることで、管理者としての視野を広げ、引き出しを増やします
スケジュールの目安
1日目と2日目の間は3〜10日程度が推奨されます。PDPのメソッドを忘れないうちに実施した方が良いこと、しかしグループワークに向けて若干の現場での情報収集を行う時間が必要なこと、がその理由です。
2日目と3日目の間は、できれば1〜2ヶ月程度空けることが推奨されます。グループワークで立てたプランを現場で実践し、P-D-Cを回した上で発表・まとめに臨むことがより学習効果を高めるからです。ただし、開催日程等の都合で実践する期間を設けられない場合には、計画のみを発表して、レポート等で実践結果を振り返るという形も考えられます。
演習支援者
PDPの実践経験を積んだ方が多い地域では、PDPファシリテーター養成講座の修了者や、過年度の修了生の中で理解度の高い方を中心として「PDPワークの支援者」を募り、グループワークの支援に当たっているケースもあります。概ね2グループに1名以上(受講生8名あたり1名)の支援者をつけられると、演習がより円滑に進みます。
もちろん地域内に支援者がいない形で進めることも可能ですし、初期は他県などから支援者を招聘して進めることも可能です。私たちの方で、支援が可能な方々にお声がけする場合もあります。
なお、演習支援者は決して「正解を教える人」ではありません。支援者を担っている誰もが(講師も含めて)試行錯誤の過程にあり、これでいいのかな…あれでいいのかな…と思い悩みながら支援にあたり、一緒に学んでいます。自分は経験や知識が足りないから、エキスパートの人が地域にいないから…とチャレンジをやめてしまうのではなく、勇気を持って実践しながら共に学んでいくことをお勧めしています。
テキストや費用
テキスト
こちらで販売している(書店等では一般販売しておりません)テキストを使用します。看護協会等での共同購入については、大幅に割引してご提供しておりますのでご相談ください。
講師料金につきましても、看護協会等での実施につきましては各協会の規定に沿った金額でお受けしております。また、講師・演習支援者のご紹介などもご相談に乗ります。
PDPのワークシート等は無料でダウンロードができますので、上記以外の費用負担は原則としてございません。
セカンドレベル 統合演習
ねらい
セカンドレベルのカリキュラム基準では、到達目標に「組織の理念と看護部門の理念の整合性を図りながら担当部署の目標を設定し、達成に向けた看護管理過程を展開できる」との記載があり、統合演習の内容としては「自部署の組織分析に基づいた実践可能な改善計画を立案する」と記載されています。これらの学習方策として、MCチャート/ロードマップを用いて看護管理実践計画書を作成することを意識した、統合演習のプログラムを構成しています。
基本的な流れ
セカンドレベルでは「部署」全体の課題を把握した上で、部署を新たな地平へ導くリーダーシップが求められることから、以下のように複合的な演習を行っています。概ね1~2が部署の全体像を把握する工程、3~5が設定した目標を達成に導くための計画策定の工程になります。
自組織のニーズ分析
自組織のMCチャート(≒課題マップ)の作成
本演習で取り上げる課題(目標)の設定
目標達成に向けたロードマップの策定
行動計画への落とし込み
セカンドレベルでは、演習支援者がグループにコミットする形で演習を行うケースが多いため、私たちの関与は「メソッドを共有し、演習の進め方を整える」ところに主眼を置いています。以下に、プログラム例を示します。
1日目:講義およびデモンストレーション(6時間)
学習する組織
MCチャート
目標と問題
目標管理と組織分析を問い直す
目標達成に向けた計画の策定(ロードマップ)
2日目:演習(メソッドのトレーニング、6時間)
ロードマップ
MCチャート
看護管理実践計画書の構成
看護管理実践計画書の基本構成案
看護管理実践計画書は、部署のリーダーの考え・方針をメンバーや支援する上司にちゃんと伝え、関わる人たちが前向きに取り組めるものであることが大切です。作成者も腑に落ちていない小難しい言葉や、うまく扱いきれていない分析手法を駆使することよりも、自部署がいま何を求められていて(=ニーズ)、その中でいま何にフォーカスを当て、どのようにチームで動いていくのかを、シンプルに伝わるものであってほしい…。そんな思いから、看護管理実践計画書の構成案を考えました。
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自組織の概要
所属機関の、地域内での位置づけ・機能
自組織の、機関内での位置づけ・機能
自組織の役割をめぐる状況(社会情勢、地域の状況など)
自組織のサービス提供体制(病床数、関連診療科、看護基準、人員体制 等)
自組織のパフォーマンス(病床稼働率、平均在院日数 等)
自組織に対するニーズの分析
自組織の顧客の洗い出し
顧客ごとのニーズ抽出および分類
組織の課題の全体像(MCチャート)
ニーズ分析を踏まえ、組織として重点的に取り組む課題(目標・問題)を選び出し、MCチャートに記載する
自身のビジョンや問題意識に基づく課題をMCチャートに記載する
課題について他者と対話し、表現をブラッシュアップする
今回の課題設定
MCチャートに挙げた課題(目標)から、1つを選定する
なぜこの課題を選んだのかを記載する
分析
ロードマップの策定(ロードマップのワークシート)
ギャップ分析
ステップ設計
方策の設計
スケジュールの検討
ゴール(≒期待される成果)の再検討
計画策定
各ステップについて、アクションプラン(3W1H)を記載
計画遂行の確実性を高める工夫
操作的な評価指標の設定(必要に応じて)
今回の取り組みの振り返り
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この構成では、組織に対するニーズ分析(洗い出し)、そのニーズから課題を絞り込んで部署の重点課題をまとめるMCチャート、そして目標達成のための中期的な計画(ロードマップ)の策定の3つのメソッドを使っています。
お得なテキスト研修パックがあります。
講師を呼ばない院内研修をご検討の方向けに、お得なテキスト研修パックをご用意しています。テキスト(部署マネジメント編)を研修受講者の人数分(10名以上)ご購入いただくと、MCラーニングを1か月間、無料で視聴できます。